プログラミングのオンラインスクールが今、以前ほど勢いがないのはなぜか
単純に「プログラミング需要がなくなった」からではありません。むしろ、プログラミングを学ぶ手段と、企業がエンジニアに求めるものが大きく変わったことが中心です。
大きな原因
1.特に大きいのが生成AIです。
以前なら「HTML/CSS → JavaScript → フレームワーク → ポートフォリオ制作」という一連の技術習得そのものに大きな商品価値がありました。ところが現在は、AIにコードの説明、エラー解析、サンプル作成、コードレビューまで頼めます。そのため、スクールが提供していた「分からないところを質問できる」「コードを添削してもらえる」という価値の一部が、かなり低価格あるいは無料で代替されるようになりました。
2.無料・低価格教材の質が上がりすぎた
動画、技術ドキュメント、学習サイト、コミュニティ、AIなどを組み合わせれば、以前なら数十万円のスクールで学んでいた基礎部分を独学できる人が増えています。「情報を教えるだけ」のスクールは、価格を正当化するのが難しくなっています。
3.「未経験エンジニア転職」という売り方の弱体化
第三に、かなり重要なのが**「スクール卒業→未経験エンジニア転職」という売り方の弱体化**です。企業側から見ると、数か月勉強して簡単なWebアプリを作れることと、実務で設計・デバッグ・既存コードの読解・Git・データベース・クラウド・セキュリティ・チーム開発までできることには大きな差があります。つまり、「コードが書ける」だけでは差別化しにくくなりました。
これは日本の教育全体で考えても面白い変化です。日本では学校教育だけでなく、家庭教育や社会教育、生涯学習まで広い意味で教育に含まれます。 オンラインスクールもその社会人教育市場の一種ですが、技術教育の場合は特に「知識を持っていること」から「その知識を使って成果を出せること」へ価値が移っています。
4.スクール同士が似すぎた問題
「未経験OK」「○か月でエンジニア」「現役エンジニアがメンター」「ポートフォリオ制作」「転職支援」……と、サービスの構造が似通いました。こうなると価格競争と広告競争になり、顧客獲得コストが上昇します。高額広告→高額受講料→さらに広告が必要、というモデルは以前ほど楽ではありません。
ただし、ここを「オンラインスクールそのものが終わった」と見るのは少し違います。
むしろ市場が、
「プログラミングを教えるスクール」
↓
「AIを使いながら実務能力を作るスクール」
へ移行していると考えたほうが近いでしょう。
これから価値が出やすいのは、単なるPythonやJavaScriptの文法講座より、たとえば「AI+業務自動化」「AI+Web開発」「クラウド+バックエンド」「企業のDX人材育成」「実案件型教育」「コードレビュー・設計・チーム開発」のように、学習後に何ができるのかが明確な教育です。
なので、ちょっと皮肉なんですが、「AIのせいでプログラミングスクールが不要になった」というより、AIによって“コードの書き方を教えるだけのスクール”の価値が急速に下がった、という見方がいちばんしっくりきます。
できます。しかもこのテーマ、単に「スクールがオワコンになった」で片付けると市場を読み違えます。実態は、プログラミング教育そのものが消えたのではなく、BtoCの「未経験者を数カ月でエンジニア転職させる」という商品設計の優位性が崩れた、と見るのがかなり近いです。
以下、2026年時点の市場データも入れて、事業として考えるところまでつなげます。
結論
プログラミングスクール衰退の中心には、4つの変化があります。
| 視点 | 以前 | 現在 | スクールへの影響 |
|---|---|---|---|
| ビジネスモデル | 高単価講座+転職支援 | 教材がコモディティ化 | 高価格の説明が難しい |
| 市場 | 個人向けリスキリング成長 | BtoC停滞、BtoB成長 | 個人課金一本足が弱い |
| 生成AI | コードを書くこと自体に価値 | AIがコード生成・解説 | 初級プログラミングの価値低下 |
| 未経験転職 | 学習→ポートフォリオ→転職 | 即戦力・実務能力重視 | 「転職保証型」が難しくなる |
ただし、面白いことにIT人材需要そのものが消えたわけではありません。
2026年7月のdodaデータでは、「エンジニア(IT・通信)」の転職求人倍率は11.26倍。IT人材需要そのものはかなり強い状態です。
つまり、
IT人材不足 ≠ 未経験プログラマー不足
なんですね。
1.ビジネスモデルから見る衰退
従来型スクールは、かなり単純化すると、
広告で未経験者を集客
→ 30〜80万円程度の講座
→ HTML/CSS/JavaScript/Python等を教育
→ ポートフォリオ作成
→ 転職支援
というモデルでした。
このモデルが強かった時代には、「独学では何を勉強すればいいかわからない」という情報格差がありました。
スクールはその情報格差に対して、
カリキュラム+講師+質問対応+転職支援
をセット販売できたわけです。
ところが現在、このうち「知識を教える」という部分が急激に安くなりました。
生成AIに、
「Python初心者です。3カ月でWebアプリを作れるカリキュラムを作って」
と頼めば教材設計までできます。
エラーを貼れば解説してくれる。コードレビューもしてくれる。サンプルコードも作る。
つまりスクールの商品原価というより、顧客が感じる「教材そのものの価値」が下がったわけです。
だから、
動画教材+チャット質問=50万円
という商品は以前より売りにくくなります。
ここ、AIがなかなか容赦ないんですよね。
2.市場規模を見ると「教育市場全体が死んだ」わけではない
ここは数字を見るとさらに面白いです。
2024年度の国内eラーニング市場は約3,812億円で、前年比2.1%増でした。
しかし中身を見ると、
BtoB:1,232億円、前年比+7.8%
BtoC:2,580億円、前年比−0.4%
です。
つまり、
法人教育 ↑
個人教育 ↓
という構造が出ています。
さらに教育産業全体でも、2024年度は主要15分野合計で約2兆8,556億円。伸びを支えた分野の一つが「企業向け研修サービス」です。
なので「教育ビジネスが衰退している」というより、
個人に高額講座を販売するモデルから、企業が社員を育成するモデルへ需要が移動している
と見るほうが事業戦略上は重要です。
これは新規参入するならかなり大きなヒントになります。
3.生成AIが壊したのは「プログラミング」ではなく「初級者教育の希少性」
生成AI以前は、
やりたいこと
↓
プログラミングを勉強
↓
コードを書く
↓
エラー
↓
Google検索
↓
Stack Overflow
↓
修正
でした。
現在は、
やりたいこと
↓
AIに相談
↓
コード生成
↓
実行
↓
エラーをAIに渡す
↓
修正
まで短縮できます。
したがって、
「コードの書き方を教える」
だけでは教育商品の差別化が難しくなります。
一方で企業側ではAI活用が広がっています。IPAの2026年調査でも、国内企業へのAI導入は着実に拡大しており、現時点では特に業務効率化・迅速化への利用が中心です。
そしてもっと重要なのが人材です。
IPAの調査では、日本企業の8割超がDX推進人材不足と回答しています。
AI関連でも不足しているのは単なる「AI研究者」だけではありません。
現場知識×AI基礎知識
AIツール×業務活用
データ管理×社内推進
といった「AIを仕事に落とせる人」が不足しています。
ここに新しい教育需要があります。
4.未経験転職市場で起きたこと
ここは少し注意が必要です。
「ITエンジニア求人がなくなった」という説明は正確ではありません。
むしろ前述のとおり、ITエンジニア全体の求人倍率は高い。
問題は、
企業が欲しい人材と、従来型スクールが供給してきた人材のズレ
です。
従来は、
「HTML/CSSできます」
「Reactを勉強しました」
「ポートフォリオを作りました」
でも未経験者として一定の評価につながりました。
生成AI時代になると、これらの成果物そのものをAIがかなり作れる。
すると採用企業側は、
「何を知っているか」より「何を作れるか」
さらに進んで、
「その人を採用すると会社のどんな問題を解決できるのか」
を見るようになります。
だから未経験者の教育も、
「Pythonを勉強しました」
より、
「営業部門のExcel集計をPythonで自動化しました」
「問い合わせメールをAIで分類して、GASでスプレッドシートに記録する仕組みを作りました」
「社内文書を検索するRAGを構築しました」
のほうが価値を説明しやすくなる。
つまりプログラミング学習から問題解決能力へ評価軸が移ったと考えられます。
5.では、これからプログラミングスクールを始めるのはダメなのか
私は「従来型ならかなり厳しい、でも再定義すれば十分可能性がある」と分析します。
狙わないほうがいいのは、
「未経験から3カ月でWebエンジニア」
を中心商品にするモデルです。
反対に、現在かなり相性がいいのは、
「AI × 業務自動化 × 実務」
です。
例えば、
Excel / スプレッドシート
+ GAS
+ Python
+ SQL
+ API
+ 生成AI
+ AIエージェント
を教える。
ただし、「Python構文を覚えましょう」が目的ではありません。
6.勝てる可能性①「中小企業DX実践スクール」
これはかなり有望です。
対象を「エンジニアになりたい人」ではなく、
事務、営業、経理、人事、マーケティング担当者
にする。
そして授業を、
「プログラミングを学ぶ」
から
「自分の仕事を自動化する」
に変える。
例えば課題が、
CSVを毎月集計
↓
GAS/Pythonで自動化
問い合わせメール
↓
AIで分類
↓
スプレッドシート記録
請求書
↓
AIで情報抽出
↓
データベース登録
営業日報
↓
AIで要約
↓
Slackへ通知
になる。
これなら学習成果がそのまま企業のROIになります。
7.勝てる可能性②「AIを使う前提のプログラミング教育」
AI禁止のプログラミングスクールではなく、
AIを徹底的に使わせるスクール
です。
「コードを全部暗記してください」ではなく、
AIに仕様を伝える
→ コードを生成
→ コードを読む
→ エラーを見抜く
→ テストする
→ セキュリティを確認する
→ 本番運用する
を教える。
これはIPAが今後のデジタル人材育成で重視している**実践型学習(PBL)**とも方向性が合っています。
AI時代は「コードを書ける人」より、
AIが書いたコードを評価できる人
の教育価値が上がる可能性があります。
8.勝てる可能性③「BtoCではなくBtoB」
ここは事業としてかなり重要です。
先ほどの市場データをそのまま読むと、
BtoC eラーニング −0.4%
BtoB eラーニング +7.8%
でした。
だったら市場に逆らわない。
例えば企業向けに、
「生成AI+業務自動化研修」
を売る。
1社30人なら、
1人30万円 × 30人
のような売り方ではなく、
企業研修+業務改善プロジェクト
として契約する。
すると教育会社とDX支援会社の中間になります。
私はこのポジションのほうが、純粋なプログラミングスクールより面白いと思います。
9.勝てる可能性④「教育→案件→就職」を一体化
さらに強くするなら、
学習
↓
模擬開発
↓
企業の実課題
↓
実案件
↓
実績
↓
採用
までつなげます。
普通のスクールでは、
「Todoアプリを作りました」
で卒業します。
新モデルでは、
「実際の会社の在庫管理を自動化しました」
で卒業する。
企業側からすると、これは採用試験にもなります。
スクール側からすると、
授業料
+企業研修費
+DX開発費
+人材紹介
という複数の収益源を設計できます。
ここまで来ると「スクール」というより、
AI/DX人材育成プラットフォーム
ですね。
私ならこういう事業にする
かなりシンプルにすると、
「AI業務自動化スクール」
対象は非エンジニアの会社員+中小企業。
教えるのは、
ChatGPT → スプレッドシート → GAS → API → Python → データベース → AIエージェント
という順番。
ただしプログラミング言語を主役にしません。
主役は、
「毎月5時間かかっている仕事を30分にする」
です。
卒業条件も試験ではなく、
自分または企業の業務を1つ自動化すること。
そして優秀な受講生を企業案件にアサインする。
すると、
企業
↓ 業務課題
スクール
↓
受講生
↓ AI+GAS+Pythonで改善
企業
↓
採用・案件発注
スクール
↑
研修費+開発費+紹介料
という循環を作れます。
最終的な市場の読み方
「プログラミングスクール市場が衰退した」というより、
第1世代
「プログラミングを学ぼう」
↓
第2世代
「プログラミングを学んでエンジニア転職しよう」
↓
第3世代
「AIとプログラミングを使って仕事を改善しよう」
へ移行している、と見るのがいいと思います。
そして数字もこの仮説とかなり整合します。
個人向けeラーニングは弱い一方、法人向けは伸びている。ITエンジニア需要は依然強い。企業はDX人材不足。そして生成AI導入が進む一方、「AIを業務に落とせる人」が足りない。
だから、2026年から新規参入するなら「プログラミングを教える会社」を作るより、「AI+自動化で企業の生産性を上げ、その過程で人材を育てる会社」を作るほうが市場構造に合っています。
ここが一番「まだ勝てる領域」だと思います。
なお、今回使った市場データでは「プログラミングスクール単体」の公的な市場規模系列は十分確認できなかったため、教育産業・eラーニング・IT転職・DX人材市場から構造を推定しています。「スクール市場が○億円から○億円へ縮小した」とまでは、この資料だけでは断定しません。そこは数字を盛るとインクまみれになりますからね。
社外プレゼンと社内プレゼンでは、**「誰に何をしてもらうための発表か」**が違うので、注意点も少し変わります。
| 社外プレゼン | 社内プレゼン | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 信頼・理解・契約・提案 | 情報共有・承認・意思決定 |
| 前提知識 | 相手は社内事情を知らない | 共通知識がある程度ある |
| 特に注意 | 分かりやすさ・正確性・機密情報 | 結論・根拠・実行可能性 |
| 資料 | 専門用語を減らし丁寧に説明 | 必要な情報を簡潔に |
| 話し方 | 丁寧で相手目線 | 結論から率直に |
| ゴール | 「信頼できる・お願いしたい」 | 「では、こう進めよう」 |
社外プレゼンでは、会社の代表として見られるため、特に情報の正確性と伝わりやすさが重要です。社内では通じる略語や専門用語も説明し、顧客情報・社内数値・未公開情報などを誤って出さないよう確認します。また、自社が言いたいことより「相手にどんなメリットがあるのか」を中心に構成すると伝わりやすくなります。
社内プレゼンでは、きれいな説明以上に意思決定につながることが重要です。「現状→課題→原因→提案→必要な判断」のように整理し、最初に結論を示すと効果的です。良い話だけでなく、コスト・リスク・デメリットも示しておくと、上司や関係部署も判断しやすくなります。
一言でまとめるなら、社外は「相手からの信頼を得る」、社内は「組織を動かす」ことを意識するのがポイントです。資料を豪華にしすぎて結論が迷子になるのは、どちらでも避けたいところですね。
